大阪地方裁判所 平成7年(行ウ)87号・平8年(行ウ)72号 判決
事実及び理由
第一 請求
一 甲事件
1 被告大阪府知事Y1、同大阪府出納長Y2及び同大阪府建築部住宅建設課長Y3は、別紙物件目録記載の土地上に建物を建設するために契約を締結し、公金を支出し、工事に着工してはならない。
2 被告山田勇Y4、同今堀富三及び同川崎政嗣は、同大阪府知事、同大阪府出納長及び同大阪府建築部住宅建設課長が右1の公金支出をしたときは、大阪府に対し、連帯して損害賠償金を支払え。
3 被告大阪府知事は、右1の工事が強行されたときは、工事中の振動、騒音、挨、電波障害其の他の生活妨害についての迷惑料並びに工事完成後の日照、通風、プライバシー侵害その他の生活妨害についての慰謝料及び損害賠償金を支払え。
4 被告大阪府知事は、右1の工事のために追い出した鳥、虫、その他の動物及び引き抜いた草、樹木に対し謝罪せよ。
5 被告中川和雄、同川上勇及び同難波敏廣は、大阪府に対し、連帯して損害賠償金を支払え。
6 被告株式会社ジャスは、大阪府に対し、損害賠償金を支払い、不当利得金を返還せよ。
二 乙事件
1 被告株式会社淺沼組及び同株式会社安藤建設は、同大阪府知事、同大阪府出納長及び同大阪府建築部住宅建設課長が右一1の公金支出をしたときは、大阪府に対し、損害賠償金を支払い、不当利得金を返還せよ。
2 被告株式会社淺沼組及び同株式会社安藤建設は、右一1の工事が強行されたときは、工事中の振動、騒音、挨、電波障害その他の生活妨害についての迷惑料並びに工事完成後の日照、通風、プライバシー侵害その他の生活妨害についての慰謝料及び損害賠償金を支払え。
第二 事案の概要〔略〕
第三 争点に対する判断
一 住民監査請求前置の有無について
本件においては、前記第二の一4のとおり、原告の住民監査請求は、<1>本件建替事業に係る建築請負契約の締結及び公金支出の差止を求める部分については、財務会計上の行為を対象とするものではなく、<2>本件建替事業に関して締結された基本計画策定、基本設計及び実施設計の各請負契約代金相当額の損害賠償を求める部分については、事実を証する書面が添付されていないから、いずれも不適法であるとして、却下されている。
しかしながら、原告の住民監査請求のうち、本件建替事業に係る建築請負契約の締結及び公金支出の差止を求める部分については、その請求の趣旨、内容に照らすと、財務会計上の行為たる右建築請負契約の締結及び公金支出を監査請求の対象とするものであることは明らかであって、単に右建築請負契約の締結及び公金支出の違法事由として、非財務会計上の行為たる本件建替計画の違法を主張しているにすぎないというべきであるから、財務会計上の行為の監査を求めるものとして、適法な住民監査請求と解するのが相当である。
次に、原告の住民監査請求のうち、事実を証する書面の添付がないとして却下された部分についてみると、住民監査請求が公の財産の管理、運営に対する住民による監視をその目的とするものであって、監査委員は、住民監査請求の請求内容に拘束されず、その調査権限を行使した上、必要な措置を勧告することが求められていることに照らすと、住民監査請求の際に添付すべき書面は、該当事実を具体的に指摘したものであれば足り、別段の形式を要しないと解すべきであるところ、〔証拠略〕によると、原告の住民監査請求には、建設大臣が被告大阪府知事に対してした平成六年六月二九日付け本件建替計画の承認〔証拠略〕、被告住宅建設課長が大阪府営千里古江台住宅の建替区域入居者に対してした平成七年九月二日付け通知〔証拠略〕、財団法人大阪府建設管理協会が右住宅の周辺住民に対して配付した撤去工事着手の挨拶〔証拠略〕及び本件建替計画に係る建築予定建物の図面等〔証拠略〕が添付されていたことが認められ、これら書面によって右監査請求の対象たる本件建替事業に係る基本計画策定、基本設計及び実施設計の各請負契約の締結を認識することが可能であるから、右監査請求は、事実を証する書面を添付したものとして、適法なものというべきである。
そうすると、本件監査結果は、適法な住民監査請求を誤って不適法なものとして却下したものであるから、地方自治法二四二条の二第二項三号が適用されると解するのが相当であって、本件訴えは、住民監査請求前置の要件を満たすものというべきである。
二 請求一1について
地方自治法二四二条一項一号に基づく差止請求は、違法な財務会計上の行為が行われることが相当の確実さをもって予測される場合に限り許されるところ(同法二四二条一項参照)、原告は、請求一1において、非財務会計行為たる本件建替計画の内容の不当性やその通知手続の瑕疵等を主張するにすぎず、これらの瑕疵等によって本件建替計画に係る建築請負契約の締結や公金支出が違法となるものでないことは明らかであるから、右差止請求につき違法な契約締結及び公金支出が行われることが相当の確実性をもって予測される場合に該当するとは到底いい難い。
また、原告は、請求一1において、右請負契約締結及び公金支出の差止と併せて工事の差止をも求めているけれども、地方自治法二四二条の二第一項一号は、財務会計上の行為の差止請求を求めるにすぎないから、非財務会計上の行為たる工事の差止請求は、地方自治法が認める住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法である。
そうすると、請求一1は、いずれにしても、不適法な訴えとして、却下を免れない。
三 請求一2、4、5、6及び同二1、2について
請求一2、4、5、6及び同二1、2は、いずれも請求金額が特定されていないから、請求の特定を欠く訴えとして、不適法であり、却下を免れない。
四 請求一3について
請求一3は、地方自治法二四二条の二第一項所定のいずれの請求にも該当しないから、同法が認める住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法であり、却下を免れない。
五 以上のとおり、本件訴えは、いずれも不適法であるから、これを却下する。
(裁判長裁判官 鳥越健治 裁判官 福井章代 出口尚子)